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取材記一覧

大雄山最乗寺の紅葉 取材記

・神奈川県南足柄市にある大雄山最乗寺の紅葉の取材に行きました。
以前、何度か訪れたことがあるのですが、その時は境内のモミジの
紅葉が見事に赤くなっていて、印象的だったと記憶しています。
今回の天候は曇りでしたが、今年(2014年)も、期待を裏切らないで
真っ赤な紅葉を見せてくれました。


・11月27日、小田原駅8時24分発、伊豆箱根鉄道大雄山線に乗車。
大雄山線は全線単線で終点の大雄山駅までの所要時間は約21分。
通勤通学の時間帯が過ぎているので、車内はすいている。
大雄山駅を出てすぐ右に、鉞(まさかり)をかついだ金太郎像がある。
挿入カットとして使えるので撮影をする。足柄山のシンボルとして、
童謡で有名であるが、最近の子供たちは知っているのだろうか。

9時15分発、道了尊行きのバスに乗車。
バスは杉の森の中を進んでいく。深い緑が何とも言えない。
心が落ち着いていく。ビデオカメラで前方を撮影しているが、
10分くらいで終点の道了尊バス停に到着。
参道を進みながら撮影をしていく。三門を下から見上げるように
撮影をしようとしたら、数人のグループで何か撮影をしている。
しばらく待って、相手が気が付いてよけてくれたので撮影開始。
その後、横を通してもらって進んでいく。たぶん演歌の
プロモーションビデオなどの撮影だと思う。

参道は樹齢数百年の杉林なので紅葉は少ないが、しばらくすると
赤と黄色の紅葉が眼に入ってくる。
瑠璃門下の石段のモミジが真っ赤に紅葉している。
何人かのカメラマンがすでに撮影をしているので、間に入れてもらう。
ビデオカメラのホワイトバランスで、モニタと実物の色を合わせる。
山全体に雲がかかっているので、以前のカメラだったら「曇天」の
設定だが、今、使っているカメラは大ざっぱな設定はできないので
色温度を6000Kにして、撮影を開始する。
陽射しがないので色合いが落ち着いて、いい感じである。

境内に入って、瑠璃門の屋根の上の紅葉を撮影。あずき色に近いが、
屋根の上の落葉もいい感じである。
本堂にお参りをしてから池の周辺を撮影する。池のそばのモミジも
真っ赤になっているが、剪定をしていて枝がすっきりとしている。
以前来た時は、池の中に赤と黄の落葉がぎっしりとつまっていたが、
今日は少なめである。それでも水の中と、浮いている落ち葉の
組み合わせが、とてもきれいに見える。

鐘楼のまわりの紅葉も見事である。多くの方が写真を撮っている。
モミジの落葉が赤いじゅうたんのようである。
鐘楼を見上げる位置から撮影をするが、人通りが多くて、すぐ前を
通過する人がいないタイミングでスタートボタンを押す。
何回か撮り直すが、待っているいる時間が長くなってしまう。
私の隣にいた方の写真カメラのモニターの紅葉が眼に入ったので、
「色温度の調整をしていますか?」と聞く。
「曇天にしています。」とのこと。確かにホワイトバランスの
オートではいい色が出ないので使えないと思う。
もう片方の隣の方が話しかけてくる。
「昨日は雨でしたが、昨日来た人の話では、赤い落ち葉が流れて、
すごく良かったらしいですよ。」
「雨の日は、雨の日ならではの良さがあるのですね。」

僧侶が鐘楼にきて鐘をつく。長い間隔をおいて鐘の音が響く。
残響がかなり長い。
撮影ポジションを変えて、石段の途中から見下ろす位置に移動。
先にビデオ撮影をしていた方がいたので、邪魔をしないように
セッティングをする。
「こういった状況のわかるシーンも、ビデオには必要ですよね。」
何気なく話しかけてしまう。撮影中は声が入るので禁止事項だが
今は撮影をしていない。
「そうですね。」と、同感されているようだ。
「それは業務用のカメラですか?」と聞く。
「ええ、実は私はプロなんですよ。」
「退職するまでは、放送局のニュース担当カメラマンでした。」
あるメーカーの業務用ビデオカメラで、今は自分の好きなものを
撮影しているとのこと。私のビデオカメラを見て、
「撮った絵はそちらのカメラのほうがいいですよ。ただ、
レンズが大きくて重いので、たいへんでしょう。」
「このカメラは手ぶれ補正がいいですよ。いままでの経験で、
ほとんどのカメラは三脚なしでもピタッと止められます。」
「たまたまですが、今日はいい映像が撮れたんですよ。」と言って、
ワンカットを再生して見せてくれる。
確かに良く撮れている。構図、色彩、安定したカメラワーク、
なによりも被写体を捉えるタイミングが良い。

結界門を通り、急な石段を登り、御真殿(ごしんでん)にいく。
このあたりは、下とは違った雰囲気がある。
御真殿には大きな銅鑼があるので、思い切り鳴らして、
お参りをする。家族と友人の顔を思い浮かべて健康を願う。
御真殿の横には、奉納された高下駄が並んでいる。
巨大なものから通常サイズに近いものまで、たくさんある。
紅葉がテーマの取材であって、お寺の取材ではないが、
撮影の流れとして、ひとつずつ撮影をしていく。
見る側にしてみれば、いろいろとあったほうがおもしろい。

喫煙所があったのでタバコを吸う。変わった写真カメラを
持った方がタバコを吸いに来たので、お話をうかがう。
ライカのレンズにアダプターを付けて、国内メーカーの
ボディに取り付けているとのこと。アダプターによって
フォーカスが手動になってしまうと説明をしていただく。
オートフォーカスは便利だが、油断をすると意図しない
ところにピントが合ってしまう。最初から手動だとキチンと
ピントを合わせるので、失敗は少ない。こんな話や、
新宿西口の昔のカメラ屋のことを雑談する。懐かしい時代が蘇る。

薄日が射してくる。時計を見ると12時を過ぎている。
ゆっくりと今来た道を引き返して、帰路につく。


・大雄山駅前、マサカリかついだ金太郎像。

・道了尊行きのバスは杉の森を走り抜けます。

・瑠璃門下の紅葉。有名な撮影スポットです。

・境内から見た瑠璃門。

・本堂の下の池、水の中と浮いている落葉が印象的です。

・本堂と紅葉。

・鐘楼の周辺の紅葉も見事に色付いていました。

・御真殿、どこからかホラ貝の音が聞こえてきました。

・奉納されている天狗の高下駄。

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